専門医が説く むずむず治療のすすめ

脚に違和感があって夜なかなか眠れない方は、正しい診断と適切な治療を受けるためにも、早めに専門医に診てもらいましょう。

【北海道 札幌市】特定医療法人朋友会 石金病院 副院長 香坂 雅子 先生

昼間の眠気の裏に隠れた原因を探してみましょう

 当院では、不眠に関連した病気の方を診療しています。最近は、“昼間に眠くてしかたがない”という訴えで受診する患者さんが増えてきています。例えば、何らかの原因で昼間に強い眠気を感じてしまう、などの訴えです。これには、浅い眠りばかりで睡眠の質が悪く、実は夜に十分眠れていない可能性があるのですが、「睡眠の質が悪い」という自覚が乏しいためか、患者さんは「昼間の眠気に困っている」という訴えで来院されるのです。この他に、脚に違和感があって夜眠れず昼間の眠気を訴える方や、夜間睡眠中の異常行動に困っている方などもいらっしゃいます。
 不眠に悩まれている方は、規則正しい生活を送れているか、心配事がないか、また寝るときに脚に違和感を感じていないかなど、ご自身の睡眠の時間だけでなく質や状況などについても、一度見つめ直してみることをお勧めします。そのようにして夜眠れない原因を見つけ出すことが、正しい診断につながっていくのだと思います。

睡眠薬を服用しても不眠が改善されない方は、むずむず脚症候群の可能性もあります

 私が過去に経験した患者さんのケースでは、一度不眠症と診断され、睡眠薬を服用したけれども、なかなか症状が改善されなかった方がいらっしゃいました。この患者さんの場合、「夜によく眠れない」と訴えたため、当初睡眠薬を処方されたのですが、医師からなぜ眠れないかを聞かれなかったため、患者さんご本人も眠れない原因については伝えていらっしゃらなかったようです。よくお聞きしたところ、その患者さんは脚のほてり感や違和感も訴えて来院されたので、むずむず脚症候群を疑って問診した結果、診断に至りました。このように、不眠には、それを引き起こす病気が隠れている場合があります。むずむず脚症候群以外にも、不眠の原因となる病気は色々あるので、処方された睡眠薬を服用しても症状が良くならないという方は、別の病気が隠れていないかどうかをもう一度、詳しく調べてもらう必要があると思います。

むずむず脚症候群は、じっとしていられなくなり、夜間に症状が強くなるのが特徴です

 むずむず脚症候群の代表的な症状は、その名のとおり「脚がむずむずする」や「ほてる」などさまざまな言葉で表現される“脚の違和感”と“不眠”です。大きな特徴として、(1)脚の違和感や異常な感覚があり、脚を動かしたいという強い欲求にかられる、(2)じっとしているときに症状が現れたり、強くなったりする、(3)違和感や異常な感覚は脚を動かすと軽減、消失する、(4)夕方から夜にかけて症状が現れたり、強くなる、の4つがあげられます。これらは他の病気と鑑別するポイントにもなります。ただし、この違和感はアルコール性の末梢神経障害や、整形外科の病気(脊柱管狭窄症、脊椎すべり症、椎間板ヘルニアなど)、服用しているお薬の影響、皮膚の状態などによっても似たような症状が現れることがあります。
 「自分はむずむず脚症候群かもしれない」と思われている方は、違和感があるだけでなく“不眠を伴うかどうか”や、ご自身の症状が“じっとしていられないなど、この4つの特徴に当てはまるかどうか”を今一度よく確認されると良いと思います。

むずむず脚症候群は、適切な治療を受けることで、症状の軽減が期待できます

 むずむず脚症候群の治療は、まずは睡眠習慣の改善・見直しを含めた規則正しい生活が基本となります。カフェインやアルコール、喫煙はむずむず脚症候群の症状を悪化させるといわれている上に、夜眠れなくなる原因にもなりますので、特に夕方以降のコーヒーや、アルコールの飲みすぎは控えましょう。飲む量を少しずつ減らしていき、症状が軽くなるかどうかを確認しながら、ご自身のペースで節制に努めると良いと思います。なお鉄欠乏症は、しばしばむずむず脚症候群の原因となります。体内の鉄の量を反映する指標に血清フェリチンがあり、血液検査でその値が50ng/mL未満の場合、鉄分の補充を行うことで、症状が軽減したと感じられる方も少なくないようです。ご自身の判断で鉄分のサプリメントを飲まれている方は、きちんと血液検査を行った上で、必要に応じて適切な鉄剤を病院で処方してもらうと良いでしょう。
 最近では、日本でも数種類のむずむず脚症候群のお薬が使えるようになり、患者さんの症状に合わせてお薬を選択・処方できるようになりました。患者さんご自身も、積極的に不眠の症状や状況などを医師に伝えていただき、様子をみながらご自分に合った方法で治療を進めていただけたら良いと思います。とくに、先ほど述べたむずむず脚症候群の4つの特徴が当てはまる方は、お薬の服用によって症状軽減を実感できることが多いようです。

脚に違和感があって夜なかなか眠れない方は、がまんせずに睡眠専門医を受診しましょう

 むずむず脚症候群は、適切な治療を行えば、多くの方で症状の軽減が期待できる病気です。正しい診断と適切な治療を受けるためにも、脚に「ほてり」や「動かしたい欲求」を感じて夜なかなか眠れないという方、夜中に何度も目を覚ましてしまう方は、がまんせずに睡眠専門医や神経内科、精神科を受診しましょう。まずはかかりつけ医に相談して、睡眠専門医を紹介してもらうのも良いでしょう。症状が改善して良い睡眠をとれるようになることが、健やかな毎日を送るための大切な鍵になります。症状を“ゼロ”にすることばかりに気をとられず、以前より寝つきが良くなり、日常生活に困らなくなることを目標に、ご自分の生活スタイルに合わせて無理せず治療を進めていただきたいと思います。

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